米Microsoftは日本を含め世界中で、同社のクラウドサービス「Azure」をAIやデータ分析などへ活用できる人材を、社内外問わずに積極的に育成していく考えだ。9月26日、日本マイクロソフトの伊藤かつら執行役員がメディア向けの説明会で話した。
伊藤さんは7月1日に「チーフ・ラーニング・オフィサー」(CLO、最高人材育成責任者)という役職に着任した。日本マイクロソフトの「テクノロジーを通して社会変革に貢献する」というミッションを実現するに当たり、顧客企業やパートナー企業のデジタル人材育成を通じて日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく立場だという。
Microsoftは各国法人でCLOの役職を用意。現在、伊藤さんを含め14人がCLOとして世界中でデジタル人材育成を推し進めている。
無料のオンライン教材「Microsoft Learn」 講座数は700件超
育成の指標には、同社が用意した役割別の認定資格を用いる。例えば、基礎スキルの「Azure Fundamentals」や、AIエンジニア向け資格の「Azure AI Engineer Associate」などだ。特にエンジニア向けの資格試験は、有料かつ試験時間3時間と本格的。試験会場で専用のブラウザ上から回答を行い、900点満点中700点以上を取らないと合格できないという。
これらの資格取得をサポートするべく、Microsoftはオンラインの無料教材「Microsoft Learn」を2018年9月ごろから提供している。教材は全て日本語化済みで、1講座の所要時間は30分~1時間程度。19年9月現在、731件の講座をラインアップしている。
IT部門どころか全社を支援することになった事例も
顧客やパートナー企業向けには、Microsoft Learnとトレーナー研修などを組み合わせた有料の「トレーニングプラン」を用意している。伊藤CLOは、トレーニングプランを用いたデジタル人材育成支援に対し、「提案し始める前は、企業から『なぜ認定資格を取らないといけないんだ』という拒否的な反応があるものと思っていた。しかし実際に提案し始めると非常に驚いた」と語る。
「某製造業の企業では、あっという間に人事部長まで話が通り、『実は全社的にDXを取り入れたくて、人事プログラムで何かやろうと考えていた』という反応があった」(同)
「IT部門だけではなく、工場の現場や製品開発、研究開発など、本当に全社レベルでDXを進めていきたいということだった。それを日本マイクロソフトが支援することに。IT部門だけの導入と違い、全社レベルとなると資格取得を目指す人の数の桁が変わってくる。それくらいインパクトのあるプログラムなのだと感じている」
「スキルを伸ばせる環境かどうか」就職先の魅力を左右
伊藤CLOは、「スキルを伸ばせる環境かどうかを就職や転職を考える技術者は見ている」と指摘。
「日本はこれから人材確保が難しくなってくる。就職や転職を考える技術者は、『この会社はスキルを伸ばすことを許してくれるのか』というのを必ず見るようになる。すると、社員にスキル取得を推奨する環境は会社のアピールポイントになるのではないか」(同)
日本マイクロソフトは社員向けの制度として、毎週木曜日の1時間を学習に当てる「ラーニングサースデイ」などを用意し、社員のスキルアップを促進している。
「特にこの資格を取ってくれとは言っていないが、社員が自発的にMicrosoftの資格を取り始めている。こうしたラーニングカルチャーが根付いていくことがDXの促進にとても重要。そうなっていくよう、各企業を支援していきたい」